おいしさと嚥下の関係②

「その人にとって美味しい」が嚥下を助ける
前回の記事でお伝えした通り、食べ物を「ごっくん」できるかどうかは、その人にとって美味しいかどうかが非常に重要なポイントです。
今回は、臨床経験や日常のエピソードを交えて、「美味しさ」が嚥下に与える影響を解説します。
幼少期の思い出と嚥下の関係
私自身、子どものころ、ほうれん草のお浸しがどうしても苦手でした。
口の中にためすぎて味も感じられない状態になり、結局飲み込めず、こっそりティッシュに出して食事を終えていたこともあります。
この経験を振り返ると、「美味しい」と感じられないと飲み込みにくくなることがよくわかります。
臨床でも、似たような経験をされた方が多く、「ああ、やっぱりそうか」と納得していただけることがほとんどです。
まずいものは飲み込みづらい
極端な言い方をすれば、まずいものは嚥下障害を助長する可能性があります。
だからこそ、おいしさにはこだわりたいところです。
「その人にとって美味しい」が重要
注意したいのは、最高級の食材や手間暇かけた料理が必ずしも美味しいとは限らないという点です。
ご高齢の方では味覚が衰えることが多く、甘さや味の濃さが十分でないと「美味しい」と感じられない場合があります。
- 甘いプリンと甘い飲み物を一緒に楽しむ方
- ジャンクフードを食べたいと目を輝かせる方
など、意外な嗜好が嚥下意欲を左右することもあります。
食卓を支えるあなたへ
毎日の食事づくりには、たくさんの愛情と工夫が詰まっています。
嚥下障害があるご家族のために、少しでも食べやすく、おいしく、と努力を重ねるその思いは、本当に尊いものです。
けれども、どうか一人で完璧を目指そうと頑張りすぎないでください。
摂食嚥下障害を抱える方の食事を毎日欠かさずに用意するということは、なかなかできることではありません。
わたしたち言語聴覚士(ST)は、「安全に」「おいしく」「その人らしく」食べられるようお手伝いする専門職のひとりです。
時には小さなちょっとした工夫が見つかるだけで、笑顔をみられることもあります。
少しでも食べる喜びを分かち合い、共に支えていけたらうれしいです。
まとめ
- 食べ物を「ごっくん」できるかは、その人にとって美味しいかが重要
- 最高級の食材や濃い味付けが必ずしも美味しいとは限らない
- ご高齢の方や嚥下障害のある方に合わせた「美味しさ」を見つけることが大切
- 介護者・家族と一緒に、美味しい食事を探すサポートがリハビリの一部
