胃瘻があっても「口から食べる練習」はできる― 経管栄養と嚥下リハビリの関係 ―

前回の記事では、
経鼻胃管と胃瘻はどちらも「口から食べられないときの代替栄養」であり、
善悪で分けられるものではない、ということをお伝えしました。
今回はもう少し視点を広げて、
- 欧米では経管栄養はどのように考えられているのか
- 胃瘻があっても口から食べる練習はできるのか
という点について整理してみたいと思います。
※医療的な適応の判断は必ず主治医とご相談ください。
欧米では経管栄養はどう考えられているのか
欧米では、特に**重度認知症(advanced dementia)**のケースにおいて、
経管栄養の効果について多くの研究が行われてきました。
その結果、これまでの研究では、経管栄養が生存期間を延ばしたり、誤嚥性肺炎を防いだりすることをはっきり示す結果は出ていません。
こうした研究を背景に、アメリカ老年医学会は、重度認知症では経管栄養を routine(通常の治療として一律に)行うことは推奨しないという立場を示しています。
(Finucane TE, et al. JAMA. 1999)
(Sampson EL, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2021)
(American Geriatrics Society Position Statement, 2014)
ただし、この議論は主に重度認知症の終末期の状況に関するものです。
脳卒中や神経疾患など、回復の可能性がある嚥下障害では、
栄養を確保するために経管栄養が用いられることもあります。
胃瘻があると、もう口から食べられない?
「胃瘻を作ると、もう口から食べられなくなるのでは?」
しかし、必ずしもそうとは限りません。
実際の臨床では、
栄養は胃瘻で確保しながら、
口から食べる練習を続ける
という方法がとられることがあります。
嚥下リハビリの視点から見る胃瘻の特徴
嚥下の観点から見ると、胃瘻には一つ特徴があります。
それは
咽頭にチューブがない
という点です。
経鼻胃管は
鼻 → 咽頭 → 食道 → 胃
とチューブが通るため、長期留置では
- 咽頭刺激
- 分泌物の増加
- 粘膜障害
- 咽頭浮腫
などがみられることがあります。
また、嚥下訓練を行う際にも
- チューブの違和感
- 咽頭のスペースの制限
などが影響することがあります。
一方、胃瘻は腹部から胃に直接アクセスするため、
咽頭にはチューブがありません。
そのため、
嚥下機能の評価や訓練が行いやすいケース
もあります。
栄養を確保しながら「食べる練習」を続ける
嚥下リハビリでは、
- まず安全に栄養を確保する
- その上で経口摂取を少しずつ練習する
という考え方がとられることがあります。
この場合、
栄養は胃瘻で確保しつつ
少量の経口摂取を続ける
という選択が可能になることがあります。
「好きなものだけ、甘いものを少しだけ食べたい」
嚥下障害があってもそんな楽しみを支えるのもひとつ。
もちろん、すべての方に当てはまるわけではありません。
病気の種類や体力、嚥下機能によって
適した方法は変わります。
「胃瘻か経鼻か」だけで考えなくてもよい
医療の現場では、
胃瘻と経鼻胃管はどちらも
「栄養を確保するための方法」
です。
そして状況によっては、
- 経鼻胃管を使う時期
- 胃瘻を検討する時期
が変わることもあります。
経鼻胃管と胃瘻は、どちらも「栄養を支えるための方法」です。
その違いを知ることが、その人に合った選択を考える助けになるかもしれません。
